2008年オリンピック招致について

7月14日に2008年オリンピックは北京開催が決定した。当初からこのテーマが気になっていたので、急遽、コメントすることとした。

オリンピック招致は気にかかるテーマ

大阪ガスの大西会長(当時)が大阪商工会議所の会頭に就任早々「大阪の都市格向上」を提言、本を執筆された。その後、大阪市立大学の磯村隆文教授が大阪市長になられ、大阪市は横浜市を抑えてオリンピック開催に立候補した。大阪ガスからは中野国際部長が招致委員会事務局に出向(帰社後後環境部長として私も大変お世話になった)し、関係者を挙げて積極的な活動が始まったが、その後北京市などが立候補した。

大阪市の計画について

計画案の骨子ができた段階で、(社)大阪工業会環境推進小委員会(私は副委員長)にもヒアリングがあり、次のような趣旨の意見書を提出した。

@関西全体の計画としてアクセスも工夫すべき

提案の売りは、大阪市が環境に配慮しつつ世界始めての海上都市で、現在ある競技施設などのインフラを有効に整備活用するものであった。 海外の人から見るとわずか220km2の市域でのオリンピックは説得力がなさ過ぎる。GNP世界第2位の日本の関西エリアは千数百年の歴史を誇る京都や奈良、国際港湾都市の神戸など知名度が高く、魅力が一杯ある関西を視野に入れて計画すべきである。

ところがメイン会場になる夢島へのアクセスがあまりにも貧弱である。環境にもやさしい電車で京都、奈良、神戸からわずか20〜30分で大阪へ来れるのに、JR大阪駅からメイン会場の夢島までは、桜島線の終点で地下鉄に乗り継ぐが、駅間距離が700mあるという。海外からの旅行客は、物価が高く、自由度がなく、渋滞が心配な団体バスで移動しろと言っているのと同じである。委員が現地を見なかったから大阪市の知名度が低く、票が集まらなかったとは思われない。

ちなみに、現在でも大阪駅から大阪南港の中心地トレードセンターへは30分では行けないが、桜島線のUSJ(ユニバーサルスタディオ・ジャパン駅へはJR社長の号令により大阪駅から直通で10分である。しっかりしたリーダーシップがあればできるのである。

A都市開発・整備計画とオリンピックとの関係

オリンピックが前提で、跡地利用などをするという。オリンピックがなくても快適な都市環境になるように交通アクセスを含めて計画すべきであリ、都市づくりの過程のオリンピックと考えるべきである。実態はイベント頼みの都市活性化の限界を浮き彫りにし、日本のシステム・構造上の問題であることもオリンピック委員会は見事に指摘している。

中国・北京は熱気で一杯

昨年の夏、家内と「三国志ゆかりの地めぐり」というパックツアーで北京、西安、上海周辺を旅行した。観光開発も盛んで高速道路が整備され、北京から1時間で万里の長城でのナイトツアーが楽しめた。物価は安く買物は日本の10倍位の価値がある。

北京市といっても面積は大阪市の約100倍(上海市でも兵庫県より広い)、周辺は一面のとうもろこし畑である。オリンピック施設・インフラ整備も白紙に絵を描くようで、国づくり、都市づくりの過程でオリンピックを計画するものでその熱気はすさまじい。ちなみに、マラソンコース42.195km(大坂。京都間と同じ)は市内のど真ん中に直線片道でできているほどスケールが大きい。

構造改革と意識改革は絶対に必要

IT化、グローバル化が進む中で、なぜ大阪が北京に破れたのか明白であるにもかかわらず、どのマスコミも皮相なコメント以上には触れていない。市場経済の中で大阪市や経済界の反発を招くような記事は書ききれないのだろうか。

都市のアクセスを含む交通問題は先進国では日本だけの特殊事情であり、大阪市単独では絶対に改善できない。オリンピックは広域的に見直す絶好の機会であった。例えば、毎日新聞(7月14日)によると、大阪市の大学生数は、現在25000人で1968年の37%と広域化している。企業のリストラ、再編のように、行政も待ったなしで広域的な取り組みをして欲しい。 

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